
Message
メッセージ
「テニスを愛するすべての人のための
“もうひとつの居場所”をつくる」
鶴見テニスガーデン
オーナー代理 齋藤千晶
閉ざされたイメージと
敷居の高さを感じる会員制テニスクラブ
私自身、最初は会員制テニスクラブって「閉ざされた空間」というイメージが強かったです。一部の人だけの世界というか、テニスをしている人でもなかなか入れない場所という印象でした。
実際、私自身もテニスをやるようになって改めて感じたのですが、テニスをやりたい人って本当に多いんです。でも、多くの人はスクール止まり。試合やクラブでプレーする楽しさまではたどり着けない。その理由のひとつに、やっぱり会員制クラブの“入りにくさ”があると思います。
クラブでプレーするにはダブルスを組まないといけないのですが、パートナーに迷惑をかけたくない、うまくできる自信がないという不安から、なかなか一歩を踏み出せない人も多いと思います。しかも費用も安くはないですから、ますますハードルが上がってしまうんですよね。
でも、鶴見テニスガーデンは、長年の会員さんが多くて、皆さんお互いのことをよく知っていて、まるで家族のような雰囲気です。
人数も多すぎず、自然と気心が知れている関係性が築かれているので、一般的な会員制クラブとは少し違った空気があるのかなと思います。



会員制クラブの中にあるサークル?
テニスを愛するすべての人に“居場所”を
ずっと管理運営をやってきた母でもあるオーナーの年齢的なこともあり、昨年から私もオーナー代理として運営に入ることになりました。
実は最初は渋々だったんです(笑)でも、やるからには自分もテニスをプレーしたほうがいいよなと思って、スクールにも今現在通っています。
このあたりは運営を引き継いだ当時の母と状況がほとんど同じなんですけど。
そんな中で、ある女性と出会いました。その方は長年テニスをやっているけどなかなか上達せず、会員制クラブの方に入るにはレベルが届かない。スクールでもついていくのが大変で、何よりサーブの練習ができる環境がないと。
でもね、テニスは誰にも負けないくらい好きなんです!
うちではクラブにもスクールにも当てはまるレベルの枠がなかったんです。
だったら、空いているコートを使って、その人に合った練習をする時間を作ったらどうかと。本人ももっと練習したいと言っていましたし、私も再開したばかりだったので「じゃあ一緒にやりましょう」と声をかけたんです。
始めてみると、そういう方って意外と多いんじゃないかと気づいたんです。
会員制クラブにも入れない、社会人サークルにもついていけない、スクールでは技術習得だけで終わってしまう。そんな人たちが、気軽にゲーム形式で練習できたり、壁打ちができたりする場所がない。だから、ここがそういう人たちの受け皿になればいいなと思いました。
会員制テニスクラブの中にサークル?ってちょっと変かなとも思ったんですけど、レベル、年齢に関係なく自分たちなりに楽しむ“第三の場所”があってもいいじゃないかと。
それがサークル構想の始まりです。
サークル名は「オーク」
ゆる〜く、なが〜くテニスを楽しむ
サークル名は「オーク」と名付けました。樹木のオークなんですけど、「力強さ」「長寿」「知恵」の象徴とされる木で。数百年以上生きる生命力あふれる存在です。私たちも、「ゆる〜く、なが〜く、そして前向きにテニスを楽しみなが ら成長していきたい」そんな思いを込めて、この名前をつけました。
実際にはまだまだこれからなんですけど、とにかく楽しく。コートにいるだけで気持ちが明るくなるような、そんな雰囲気を大事にしています。
まずはサーブやラリーができるようになることを目標にしていますが、それ以上に「テニスが好き」という気持ちを大切にしたいと思っています。
だから、場合によってはラケットを持たなくてもいい。ボール投げだけでもいいし、テニスコンディショニングとして体の動かし方を学ぶだけでもいい。仲間とおしゃべりだけの日があってもいい。そうやって、メンタルもフィジカルも支える居場所にしていきたいです。
基本、初心者が対象ですが、会員制クラブの会員さんがサークルに来てもらうのも全然ありで、ときには指導したりしてもらうのもお互い良い交流になるし、刺激になるんじゃないかなと思っています。
「今日はガチのプレーは疲れたからサークルのぞいて行こう」なんていうのもありだと思います(笑)
会員制テニスクラブのなかにあるサークルだからこそ、色々な可能性を秘めているのではないかと思っています。


初心者向けテニスサークル
「オーク」のロゴマーク


テニスの魅力
私が最初にテニスを始めたのは大学生の頃なんですけど、テニスサークルが流行っていた時代でもあって、まわりがみんなテニスをやっていて、夏になると友だちと皆で山中湖までテニス旅行に行ったりしてたんです。だからちょっとはできたほうがいいかなと思って。うちは実家がテニスクラブですから、うちのスクールに入って習い始めました。それがテニスを始めたきっかけですね。
でも、卒業して社会人になってからは自然とやらなくなりました。今回またテニスをやることになって、久しぶりに打ってみたら「あぁ、意外と打てるな」って(笑)。
テニスの魅力って、私は勝つことよりも「言われたことができた」という達成感にあると思うんです。「こう打てば、こう返る」という技術的な再現性が面白い。その積み重ねが自信につながっていくと思うんです。
それが試合で活かせるようになれば、もっと楽しいんでしょうけど、そこはまだまだこれからですね(笑)。
単純に上手い下手じゃないんですよね。テニスって。
試合に出る人って実際はそんなに多くはないし。ラリーだけ壁打ちだけでもいいっていう人もいる。自分なりに自由に楽しめるのがテニスの良いところなんじゃないかと思います。
次のバトンを受け継いで―
母がオーナーになったときも、実は特別にテニスが好きだったわけではなかったんです。私も同じでした。でも、やらざるを得ない状況の中で「どうすればもっと良くなるか」と考えながら、今も試行錯誤を続けています。
そして今は、先ほどお話しした会員制クラブに加えて、「もうひとつの場所」としてのサークルに、大きな可能性と希望を感じています。
祖父が想いを込めて立ち上げたこのクラブが、50年も続いているということ自体、本当に奇跡のようなものだと思っています。もちろん経営の面では考えることも多いですが、ここに来ると、いつも「やっぱりいい場所だな」と感じるんですよね。居心地が良いというかホッとする感じなんですよね。良くも悪くも商売っ気がないので(笑)
先日、88歳の方とお話ししたんですが、「今が一番元気!」っておっしゃるんですよ。88歳で(笑)。その方は幼いころは病弱で、運動もあまりできなかったそうなんですが、今では速いボールもバシバシ打たれるし、本当にお上手なんです。だからこそ、「今が一番元気」って言葉に説得力があるんですよね。
そして、いつも帰り際には「ここがあって本当に幸せ。ありがとうございます」って言ってくださる。
そのたびに「この場所を大切に守りたい」と思います。
こうした方々にとって、ここは本当に大事な場所なんだと思います。
テーマはテニスですが、それだけにとどまらず、コミュニティとしての「場」づくり、体のケアや心の支えも含めて、ともに人生を過ごしていける場所を、これからも築いていきたいと考えています。

